美化

「テレビ付きのシングルルームでないと寝れないなんて、現代の軟弱青年代表のくせに好みが激しいんだよ」「読書をして昔の人のことを考えると心が安らぐ。現代に比べ昔の著作は心にしみる内容のものが多い」ひとつ目の文章は現代の若者は軟弱でわがままといい、ふたつ目の文章は今より昔の本のほうが心にしみるという。どちらも「昔の○○は良かった、それに比べ最近の○○はダメだ...」という良く聞くフレーズなんだけど、ひとつ目は30年前に書かれた漫画「こち亀」からの抜粋でその時の若者は現在50代の中年だし、ふたつ目は700年も前に書かれた随筆「徒然草」からの抜粋だから鎌倉時代に比べ平安時代は良かったということになる。たまたま読んだふたつの本がこんな感じだから、ネットでちょこっと調べてみると、紀元前のどこかの壁画にも「俺らの若い時に比べて、最近の若いやつは...」という愚痴が書いてあるとのこと。さらには若者の読書離れ、学力低下、若年層の凶悪犯罪の増加などなどお決まりのように言われてることだってすべてはイメージ先行で事実と異なるといってる人もいる。少し前までキレやすく凶暴と言われ、今では草食系で内向きで元気がないと言われる若者。若者というカテゴリーから外れることが多くなってきてしまった今だからこそ、現代を否定して過去を美化しすぎることがないように心がけることにしよう。
徒然草」 吉田兼好著 (角川ソフィア)