最近読んだ建築・都市の面白かった本3冊。1000年の時の流れを考える木造建築、200年の耐用年数をもつコンクリート、ここ数10年の都市化を支える鉄骨の超高層建築。著者の経歴も書いている内容も扱う材料もまったくばらばらだけど、大きな時の流れの中で建築・都市を考えるのにとても面白い3つの本。それぞれ単独で読んでも面白いけど、併読することで見えてくる新しい視点があったりなかったり。「銃・病原菌・鉄」みたいなタイトルになったのは単なる偶然が必然か。。
棟梁小川三夫 2011法隆寺最後の宮大工・故西岡常一の内弟子を務めた後、「鵤工舎」を設立、数々の寺社建設を手がけ、後進を育てた著者が、引退を機に語る金言。単純がいい。人も建物も図面も、単純できれいに無駄のないものじゃなくちゃだめ。木は強い。鉄やコンクリートより強い。建築基準法でお寺の基礎をコンクリートにしてから、一番弱いのは基礎になった。法律はたかだか何十年の歴史の中での基準だが、お寺は千三百年の伝統の中で育まれている。宮大工は木の性質・癖を上手く活かしてかみ合せ1000年先を見越して寺社を建てる。均一化されたものは弱い。
バベる! 岡 啓輔 2018東京港区で5000万円の土地を1500万円に値切って手に入れた30㎡弱の土地に、自邸を設計して自分でつくるドキュメント。2005年につくりはじめ、未だ建築中というそのストーリーもさることながら、高専を卒業後、サラリーマン、建築現場作業員を経て、無職(というか自邸を建設する仕事に従事)する著者の経歴、「蟻鱒鳶ル」という説明されるまでなんのことがわからない名前を自邸につけるセンス、200年の耐用年数をもつコンクリートに対する熱い思いなど、筆舌に尽くしがたいものがこの本にはある。
都市は人類最高の発明であるエドワード・グレイザー 2012マンハッタン生まれのハーバード大学 経済学部教授の本。交通・ITの発達によって、世界は1つに結ばれフラット化すると言われていたが、現実は人も富も大都市部へと集中している。その理由は都市の「密集性」 と 「多様性」 にあると言う。そのために必要なのは都市の高層化。高層化することで住宅価格は下がり、多様な人が生活できるようになる。結果、都市はイノベーションを育み、社会を発展させる。高層化は手段であり、人的資本の集積こそが目的。
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